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最高裁判所第一小法廷 昭和23年(れ)438号 判決

主文

本件上告を棄却する。

理由

辯護人徳見廣元上告趣意について。

刑訴第三六〇條にいわゆる罪と爲るべき事実とは、犯罪の構成に必要な具體的事実を指すものであることは所論のとおりである。しかし強盗罪の構成要件たる「他人の財物」を判示するには犯人及び共犯者以外の者の所有に屬する如何なる財物なりや等要するに法令の適用の基礎を明らかにするに必要な程度に具體的であるを以て足り、所論のようにその財物の種類、數量、價格等若しくは何れの物品が何人の所有又は保管に屬するかを一々詳細に判示しなければならぬものではない。原判決は本件強盗の被害品の判示として判示西山富藏方において同人の所有又は保管に係るシンガーミシン一薹、衣類生地等二十四點、冬外套二十四着、同生地百十三着分(價格合計約十五萬二千五十圓相當)を強取した旨判示しているから、本件強盗罪の目的物の判示が刑法第二三六條第一項を適用するに必要な程度の具體性を有すること明白である。それ故原判決には所論の違法はなく、論旨はその理由がない。

よって刑訴第四四六條に則り主文のとおり判決する。

この判決は裁判官全員の一致した意見である。

(裁判長裁判官 齋藤悠輔 裁判官 沢田竹治郎 裁判官 真野毅 裁判官 岩松三郎)

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